コーヒー豆の焙煎デザインに必須の Artisan-Scope ついて紹介します。
アルチザンスコープと読みます。
「匠(職人)の見るための道具」って意味ですね。
さて、スウィングコーヒーでは仕入れた豆ごとにカッピングし、
その豆のテロワール(=産地特性)を活かす焙煎度をまずイメージします。
採用する焙煎レベルが決まれば後はローストするだけなのですが、
ここで問題が二つあります。
一つは、同じ焙煎レベルであっても、焙煎過程が変われば香味(=フレーバー)が
変わる点です。
この焙煎過程は、次の3フェーズに分かれています。
1.ドライングフェーズ(乾燥段階)
2.メイラードフェーズ(メイラード反応段階)
3.デベロップメントフェーズ(仕上段階)
ドロップした焙煎豆が、同じミディアムハイロースト(=浅煎り)の仕上がりでも、
上記3フェーズをどのように辿ったかによって、微妙に味わいが変わるのです。
ここに焙煎の面白さがあり、難しさがあります。
本当に、好奇心が尽きることがありません。
この辺りのわずかなフレーバーの違いを気にしない焙煎士も多分いるのでしょうが、
EJは細かなことにこだわる性質なのです。
したがって、スウィングコーヒーでは、
どんなに面倒でも、それぞれの豆ごとに決定した焙煎レベルの
標準デザインからカッピングを繰り返し、
その豆固有の最適焙煎デザイン(=銘柄ごとの焙煎デザイン)を形成する作業を行っています。
その際になくてはならないガジェットが Artisan-Scope(アルチザンスコープ)という
コーヒー焙煎のためのオープンソースのロギングソフトウェアなのです。
この Artisan-Scope は、焙煎過程の様々な変数のロギングが行えるソフトウェアなのですが、
それ以外に、焙煎デザインを行うこともできる優れものです。
そして、実際の焙煎では、焙煎機と Artisan-Scope をPCで繋ぎ、
そのデザインを背景に(=海図に)、デザインをトレースしながら焙煎します。
また、それが問題の二つ目を解決してくれるることにもなるのです。
では、問題の二つ目は?
浅煎りで焼くと決めた場合、各バッチ(=各焙煎)ごとの再現性の問題がそれです。
毎回同じようにローストできるか?
ってことですね。
個人が趣味で自家焙煎を楽しむ分には、「一期一会」のたまたまの焼き加減でも
問題ありませんが、コーヒー豆を商っていたり、とことん追求する焙煎人にとっては、
その時のたまたまの焼き加減ではダメなのです。
その豆のテロワールを最大限に引き出す焙煎デザインをデザイニングしたならば、
何度焙煎しても、毎回そのデザイン通りに仕上げたいわけですね。
これまでの焙煎士は、紙と鉛筆と経験値でその再現性を担保していましたが、
Artisan-Scope は、それとは比較にならないほど、効率的かつ正確であると言えます。
明らかに、紙と鉛筆と経験値よりもフレーバーのブレは抑えられるのです。
もちろん、ローストデザインは、使用する焙煎機によっても異なりますし、
同じ焙煎機でも、使用する環境により同じデザインでもフレーバーが異なってきます。
つまり、使用する焙煎機ごとにデザインは微妙に調整が必要になるってことです。
これもコーヒー焙煎の難しいところであり、面白いところでもあります。
下記のローストデザインは、
E.J. が自宅で愛用している HIVE ROASTER のCASCABELを使用する時の標準デザインです。
(Photo:hiveroaster.com)
ローストデザイン
上記のデザイン図は、余計な項目は省き、
ドラム内の豆温度の変化と1分間の温度上昇率(RoR=Rate of Rise)のみプロットしたものです。
緑色がドライングフェーズ、
オレンジ色がメイラードフェーズ、
そして茶色がデベロップメントフェーズを表しています。