ため息をついて、悪いか!

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ため息をつくと幸せが逃げる。

これは、よく聞く言葉である。では、その根拠は?

おそらく誰も答えられないだろう。

当然、科学的根拠などあるはずも無いただの迷信(?)である。

実のところ筆者は、日頃から大小のため息をよくつくのだが、

今回は、その「ため息」の効用について、珈琲人の視点で綴ってみたい。

コーヒーでリラックスする男

ため息って何だ?

そもそもため息は、何らかのストレスを感じている際や、緊張が解けた際、

また、心を揺さぶられる感動を覚えた際に出る吐息のことである。

一般にネガティブなイメージで捉えられる理由としては、

ため息の印象が、主にストレスと結びついているためと思われる。

そのストレスの原因が、「不安」や「悩み」、

それに「失望」など、マイナスの精神状態であることを誰もが自覚しているからであろう。

確かに、目の前の他人に「負のオーラのおすそ分け」よろしく、

大きなため息をつかれると余り気持ちの良いものではない。

そこで例の「ため息をつくと幸せが逃げる」が登場する。

つまり、面と向かって相手に「不快だ」と言い辛いため、

嫌みに聞こえないよう、遠回しに「エチケットを守ってね」と言いたいわけだ。

それはさておき、この「ため息をつくと幸せが逃げる」は、誰が言い出したのか?

はっきりした由来は不明なのだが、古くからの伝承でないことは確かだ。

面白いものでは、

キューバのカストロ(=キューバ革命後の最高指導者)が言い出したという説もある。

いずれにせよ、ため息をつかない人はいない。

ただし、大きなため息をつく際は、極力人目をはばかる必要がありそうだ。

ため息のリラックス効果

ところで、ため息はマイナス、深呼吸はプラスというイメージはないだろうか?

ため息は機能回復のための呼吸、

深呼吸は機能予防のための呼吸で、

どちらも大きく呼吸する点で同じなのだが、この印象の違いは否めない。

人はストレス等で緊張状態に陥ると、呼吸が浅くなり血液中の酸素が不足する。

そこで、それを補うために「交感神経」が勝手に働き出す。

いわゆる交感神経優位の状態となり、一時的に自律神経のバランスが崩れてしまうのだ。

交感神経は、全身の血管を収縮させることで血圧を上げ、血液中に不足した酸素を供給し、

カラダを活性化させるアクセルの役割を持つ自律神経の一種である。

一方で、人がリラックス状態にある際は、副交感神経が優位に働いている。

副交感神経も自律神経の一種で、心身を休める際に働くブレーキの役割を持つ。

ため息は、交感神経優位の状態を緩和するのに大いに役立つ。

「はぁ~」

っと大きく息を吐くことで、無自覚ながらも副交感神経に働きかけ、

一時的に崩れた自律神経のバランスの回復を図っているのだ。

このように「ため息をつく」ことは、心身の緊張状態をほぐし、

リラックスするために欠かすことのできない必須の生理現象と言えるだろう。

ため息ついてもいいんですよ

筆者がため息をポジティブに捉えるようになったのは、

かかりつけのドクターの影響が大きい。

「我慢大敵」を信条にしたお医者さんで、

「心身ともに、出るものは我慢せずに大いに出しましょう!」

が決まり文句である。

先に紹介した、

「ため息をつくと幸せが逃げる」の言い出しっぺが、キューバのカストロ説のウンチクも、

そのドクターから聞いた話である。

また、世の中「腹式呼吸」や「呼吸法」の大切さを唱えつつも、

他方では「ため息」を後ろ向きに捉える風潮にある矛盾についての持論も面白いのだ。

当然、ドクターらしく自律神経のバランスの重要性に絡めての話なのだが、

門外漢の筆者では、同じ説得力を持つ話ができないのがとても残念である。

「人前でため息をつくと、人は逃げても幸せは逃げません」

逆に、

「ため息をつくのは、カラダにいいのですよ」

その言葉に合点のいった筆者は、迷信(?)など気にも留めずに、

自覚、無自覚を問わず、毎日のようにため息をついては心身のリラックスを心掛けている。

一杯のコーヒーとため息

さて、皆さんは、コーヒーノキの花言葉をご存知だろうか?

コーヒーノキの花言葉は、「一緒に休みましょう」である。

ちなみに、コーヒーノキの表記は「コーヒーの木」ではなく、「コーヒーノキ」が正しい。

アカネ科のコーヒーノキ属に属する主に栽培種の植物を指した総称である。

さらに、この花言葉を言い換えるとするなら、

「コーヒーを飲んでリラックスしましょう」

「コーヒーを飲んでホッとひと息つきましょう」

がピッタリくるのではないだろうか?

事実、筆者は一人でコーヒーを飲む際、

一口飲み終わる度に、大きくひと息(=ため息)をついている。

そして、緊張が解けてゆく感覚をしみじみと実感する。

正に、副交感神経が働き出す感覚を味わえる稀有な瞬間である。

もちろん、今回取り上げた「ため息」も「一杯のコーヒー」も共に、

リラックス効果が絶大であることを強調しておきたい。

当然、リラックス効果の高いコーヒーは、

豊かな香りと、華やかなコーヒーフレーバーを持つクロップに限る。

いかがだろう?

少しはため息を見直していただけただろうか?

今回は、ため息をつくことに肯定的な珈琲人の視点を紹介してみたのだが、

毎日を気楽に生きるためのヒントにしていただければ幸いである。

なお、このエッセイのサムネイル画像は、

ヴェネツィアの「ため息橋」のフォトであることを紹介して結びたい。