SHOGUN 将軍

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ここ数週間、ハリウッド製作ドラマ「SHOGUN 将軍」が世界中で話題を集めている。

本年の2月より配信を開始した歴史超大作だ。

主演の真田広之さん以外にも、多数の邦人俳優が出演しているドラマでもある。

日本では「ディズニー・プラス」の独占配信になっている。

もちろん、歴史ドラマ好きの筆者は迷わず「ディズニー・プラス」に登録した。

なお、筆者はTVを観ない(=契約を解除している)のだが、ネット配信には登録している。

ちなみに、現在登録しているネット配信は、

の5つである。

このドラマの原作は、英国の小説家ジェームズ・クラベルの「将軍」だ。

筆者が青年時代の1980年に観た三船敏郎・島田陽子出演の同タイトルドラマのリメイク版となる。

しかし、映像や質感が前作とはまったく異なっている。

断然、今回のドラマに軍配があがるとともに、このドラマを観ている海外の視聴者が、

日本文化に傾倒するキッカケになりそうな予感がしてならない。

ここでの傾倒とは、

などなどで、

このまま円安状態が続けば、日本を訪れる外国人観光客がますます増え続けそうである。

カトリックとプロテスタント

筆者がこのドラマに興味を持つのは、カトリックとプロテスタントによる宗教対立。

ならびに、大航海時代から植民地支配時代へ突入した世界史的大転換の時代であること。

さらに、これらの背景にあるキリスト教の「黒歴史」も敢えて描こうとしている点にある。

いわゆるルターやカルバンによる宗教改革が16世紀の欧州で起こり、

キリスト教は、カトリックとプロテスタントに二分された。

丁度その時期は、折しも大航海時代であり、やがてはキリスト教(主にカトリック)の

布教と国土支配がワンセットとなった植民地支配政策へと舵を取る。

そこには、教皇と国王の利害の一致が根っこにあった。

このような歴史的思惑が垣間見えるのが実に良いのだ。

特に、イエスズ会による伝道は、

布教が表の顔であり、裏では国家(=王家)による先住民、財貨、国土の

簒奪とワンセットであった歴史的事実を見逃せない。

日本の教育では、

フランシスコ・ザビエルによるキリスト教伝道、

種子島への鉄砲伝来、

その後のキリシタン禁教令および徳川幕府による鎖国政策などの

表面的なトピックしか学ばないため、

世界史的視野から見た当時の日本が置かれた状況をシビアにイメージする想像力を持たない。

なぜ、徳川幕府は鎖国しながらもオランダ・イギリスと通商を続けたのか?

ポルトガル、スペイン、キリスト教(=カトリック)は排除したにもかかわらずだ。

その背景を語れる日本人は少数派だろう。

その点からも、本ドラマは視聴に値する。

日本も植民地の標的だった

実は、日本がスペインによる植民地の標的になっていたことをご存知だろうか?

日本史でいうところの、信長、秀吉、家康の愛知県が誇る3英傑時代の話である。

当時、太陽が沈まない大帝国を築いていたスペインによるアジア政策の一環だ。

スペインは、明国征服への足掛かりとして、日本の植民地化を狙っていた。

これは史実である。

その尖兵として、まずイエスズ会によるキリスト教伝道があった。

事実、数十万人の信徒や西国の大名にまで食い込むことに成功した。

また、通商(=貿易)の対象として、数万人の日本人が奴隷として取引され、

海外に送られたことも、日本の学校教育では教えない史実である。

日本の民人が奴隷として輸出されていたのだ。

もちろん、日の本(ひのもと)の政(まつりごと)を司っていた

当時の支配層(=秀吉や家康)にとっては見過ごせない状況にあった。

豊臣秀吉が、なぜ明国に向け出兵したのか?(日本史ではなぜか朝鮮出兵と学ぶ)

それは決して、判断力の鈍った老人による無謀な征服戦争などではなかった。

歴史的事実として、この2回におよぶ明国への出兵により、

その戦闘力の高さを思い知らされたスペインは、日本の植民地化を諦めざるを得なくなった。

それは、先方の歴史的公文書にも遺っている。

当時、無敵を誇ったスペインの軍事力をもってしても、

戦国時代のサムライ戦闘集団には太刀打ちできないと判断したからに他ならない。

豊臣秀吉、徳川家康らの断固たる対外政策により、日本は植民地化を免れたのだ。

このような歴史的事実は、日本人としてしっかり学ぶべきと思うがいかがだろう?

鉄砲から刀へ回帰した日本

話はそれるが、

鉄砲伝来後、数年で国産化に成功した日本は、輸入に頼ることなく

国内において火縄銃を大量生産してしまう。

それは現代にも受け継がれた日本が日本たる所以であろう。

その保有量は、当時、世界随一だったことが後世の研究により明らかになっている。

当然、武器は進化するものであり、

事実、西欧では戦争における重要な道具として欠くべからざるものになった。

「川の流れは逆らわない」の理(ことわり)である。

戦国時代において、世界随一の鉄砲を保有していたにもかかわらず、

戦乱が止むとともに、日本は鉄砲を放棄した。

つまり、武器としての鉄砲が必要でなくなったため、その進化が止まってしまったのだ。

これは、世界の流れに逆行した事象として捉えられている。

実に日本人らしい選択である。

一方では、徳川幕府時代が、世界的にも信じられないほど平和だった証とも言える。

また、そもそも鉄砲は足軽が持つ武器であったため、

名乗りを上げ、一騎打ちを本分とする武士道精神とはそもそも相容れなかったことも

鉄砲を捨てた一因と考えられる。

「刀は武士の魂」だが、

「鉄砲は武士の魂」になり得なかったのだ。

今回は、現在ディズニー・プラスで配信している「SHOGUN 将軍」に触発され

思うところを綴ってみた。

海外での評判も非常に良い。

ハリウッド製作にもかかわらず、日本人が観ても違和感のない映像になっているところが

また素晴らしい。

歴史好きにはたまらないドラマである。