TDS(濃度)計

ドリップした抽出液のデータ採取を行うためのTDS(濃度)計を紹介します。

このTDS(濃度)計は、コーヒー業界に身を置く人なら馴染みのガジェットになります。

アタゴ社のTDS計

TDSとは

スペシャルティコーヒーが認知され始めた2000年頃から、

この計測器で測るデータにも、自然と注目が集まるようになりました。

もちろん当時は、コーヒー専用のTDS計はありませんでしたので、

ショ糖を計測するためのBrix(ブリックス)計を代用して計測していました。

では、そのデータとは?

それは、

TDS(Total Dissolved Solid=トータル・ディゾルヴドゥ・ソリッド)

と呼ばれるものです。

日本語では、

総溶解固形分

という難しい言葉のデータになります。

コーヒー業界では、簡単に「濃度」と表現するのが一般的です。

TDS=濃度

抽出後のコーヒーの濃度を計測し、

濃過ぎないか?

薄過ぎないか?

をチェックする際に、このTDS(濃度)計を用いることになります。

要するに、濃度とは、

「抽出したコーヒーの中にどれだけのコーヒー成分が含まれているか?」

のことであり、その値(%)を示す指標が TDS というわけです。

TDSの世界標準

美味しいコーヒーのTDSは、

1.15~1.35%

が世界標準とされています。

この指標は、

SCA(Specialty Coffee Association=スペシャルティコーヒー協会)が

公表している指標です。

これは見方を変えると、抽出されたコーヒー100%のうち、

「98%強が水によって構成されていますよ」

ってことを意味しています。

つまり、美味しいコーヒーを抽出するためには、水が重要であることが理解できます。

柔らかい湧き水で抽出したコーヒーと水道水で抽出したコーヒーを飲み比べれば、

その差は歴然なのですが、こればかりは、実際に比較試飲してみなければ、

この「差は歴然」をご理解いただけないと思います。

唐突ですが、京都にこだわりのコーヒー店が多いのも納得できます。

京都には、本当に美味しい湧き水が沢山ありますからね。

EY(収率)って何だ?

さて、このTDSが計測できれば、

もう一つ重要なデータが同時に計測できます。

それが、

EY(Extraction Yield)

です。

EYのことを日本語では「収率」と表現します。

EY(エクストラクション・イールド)=収率

このEY(=収率)は、

抽出したコーヒーが「抽出過多=過抽出」なのか「抽出不足=未抽出」なのか

を判定するために用いる指標です。

例として、

12gの豆量で180gのコーヒーを抽出したとします。

その抽出液のTDSが1.3%だったとすると、

180g × 1.3% = 2.34g

つまり、12gのコーヒー豆から2.34g 分のコーヒー成分を抽出液に溶け出させたということです。

その比率がEY(=収率)です。

2.34g ÷ 12g = 0.195 ⇒ 19.5%

コーヒー専門店では、その店ごとに、我が店の「収率」なるものが必ず存在します。

従業員がドリップするような店では、

淹れるスタッフごとに味わいが異なっていては話になりませんからね。

店の「収率」に基づいて、

誰が淹れてもその収率に収斂するように日頃から訓練しているわけです。

収率=抽出液の量(g)×TDS(%)÷豆量(g)

この収率にも世界標準があり、

18%~22%

がゴールデン・ゾーンとされています。

ただし、EJの個人的見解として言わせてもらうならば、

TDSや収率は、あくまでも補完的なデータであって、

自分が美味しいと思える一杯、

つまり自分の舌に優先するものではないということです。

もっとも、普段から自分の舌(=味覚)の相対指標として用いていれば、

自分の舌の点検には、大いに役立つ利点があります。

自分にとって真実の美味しさを知るのは自分自身の舌のみであり、

TDSや収率は、あくまでも相対的な指標でしかない。

ということで、今回は、EJが愛用しているATAGO社のTDS計の紹介でした。